横浜地方裁判所 昭和28年(行)8号 判決
原告 北村研
被告 初声村農業委員会・神奈川県農業委員会
一、主 文
一、原告の請求を棄却する。
二、訴訟費用は、原告の負担とする。
二、事 実
第一、当事者の求める裁判
(一) 原告は「(1)被告初声村農業委員会(以下単に村委員会と略称する)が昭和二十七年九月二十六日原告所有の別紙目録記載の土地に対して樹てた買収計画を取消す。(2)右買収計画異議却下決定に対する原告の訴願につき被告神奈川県農業委員会(以下単に県委員会と略称する)が昭和二十八年三月三十日附でなした訴願棄却の裁決を取消す。(3)訴訟費用は被告等の負担とする」との判決を求め、
(二) 被告等は、主文同旨の判決を求めた。
第二、請求原因及びこれに対する答弁
(一) 原告は、次の通り主張した。
(1) 別紙目録記載の各土地は、原告の所有地であるところ、被告村委員会は昭和二十七年九月二十六日右土地を不在地主の小作地であるとして、自作農創設特別措置法第三条、第一項第一号にもとずいて買収計画を樹てた。そこで原告は同年十月一日右委員会に対し異議を申立てたが、同委員会は同年十月十六日これを却下したので、原告は更に同年十月二十八日被告県委員会に訴願したところ、同委員会は翌二十八年三月三十日右訴願を棄却し、その裁決書は同年四月十七日原告に送達された。
(2) しかしながら右各土地は小作地ではない。原告は、右土地の管理を訴外山本泰次郎に委託して置いたところ、同人は原告の知らない間に無断で右土地を開墾耕作していたものである。
(3) 従つて村委員会の樹てた前記買収計画並にその買収計画を維持して原告の訴願を棄却した県委員会の右裁決は自作農創設特別措置法に違反し、法律にもとずかない行政処分であつてこの意味に於て憲法にも違反するものである。
(二) 被告等は次の通り答弁した。
(1) 原告主張(1)の事実は認める。
(2) 同(2)の事実の内訴外山本泰次郎が本件土地を開墾耕作していることは認めるが、その他の事実は否認する。本件土地は右山本が買収計画時の数年前より原告と使用貸借契約に基いて耕作している自作農創設特別措置法にいう小作地である(立証省略)。
三、理 由
一、原告が請求原因として主張する(1)の事実並に(2)の事実の中訴外山本泰次郎が買収計画時本件土地を耕作していたことは当事者間に争がない。
二、原告本人尋問の結果によると、原告は、かねて昭和十三年頃より本件土地に隣接する土地の埋立工事を施行していたがその工事材料の置場や一部埋立用の土取をしたいため、本件土地を昭和十八年十二月訴外山本泰次郎より買受けたものであるが、昭和十九年三月埋立工事禁止法令がでてその埋立工事を中止するのやむなきに至り原告は右埋立工事の現地を引揚げるに際し、右山本に対し、埋立地と、本件土地の見廻りや、埋立地の飯場にあつた若干の器械類が盗難にかからないように注意してくれるよう依頼したことを認めることができる(右認定に反する証人山本泰次郎の証言は信用しがたい)けれども一方に於て証人井上久次郎の証言によつて真正に成立したと認める乙第一号証成立に争のない乙第二号証と、証人山本泰次郎、同川名洋、同石橋梅吉、同井上久次郎の各証言を綜合すると、山本は本件土地を畑地とするためその開墾を昭和二十年十月に始め同二十一年十月完了し、同二十六年内約四畝位を水田にし、翌二十七年更にその大部分を水田にしたことが認められ右山本が右開墾に着手するとき又は畑地を水田にするについては、その事前に原告より承諾を得ていたことを認めることができる(右認定に反する原告本人の尋問の結果は信用しがたい)から山本の右土地の耕作については原告との間に一種の使用貸借契約が成立したものと言うべきである。
三、従つて本件土地は自作農創設特別措置法にいう小作地にあたるから(右山本が耕作の業務を営んでいることは弁論の全趣旨により認められる)被告村委員会の樹てた前記買収計画、被告県委員会のなした前記訴願棄却の裁決は適法であつて原告の主張する意味に於て、憲法にも違反しない。(原告のいう憲法違反の主張は法律違反なるが故に憲法に違反すると言うのであるから被告等のなした行政処分が法律に違反しない旨の判断をすれば足りる)
四、よつて原告の請求を棄却し訴訟費用は敗訴の原告に負担させ、主文の通り判決する。
(裁判官 地京武人)
(目録省略)